自治体DXが遅れる5つの理由と今すぐ始めるべき具体的対策

2025/12/11

DX対策が進まずに焦りを感じている自治体職員の方も多いのではないでしょうか？実際に、多くの自治体でデジタルトランスフォーメーション（DX）の推進が思うように進んでいない現状があります。今回は、自治体DXが遅れる理由と、今からでも間に合う効果的な進め方について詳しく解説します。

Contents

1 自治体DXの現状と2025年問題の深刻さ
- 1.1 全国自治体のDX進捗状況と課題
- 1.2 2025年の崖が自治体に与える影響
2 自治体DXが進まない5つの根本的理由
3 今すぐ実践できる自治体DX推進の具体的ステップ
4 FunTre株式会社の自治体向けサービス
5 成功事例から学ぶ効果的な推進手法
- 5.1 規模別成功パターンの分析
- 5.2 業務分野別の導入優先度
  - 5.2.1 優先度が高い分野
  - 5.2.2 中長期的な取り組み分野
6 今から始める段階的な目標設定と推進計画

自治体DXの現状と2025年問題の深刻さ

自治体DXはとても厳しい状況にあります。また、控えている「2025年問題」についても説明します。

全国自治体のDX進捗状況と課題

2025年度末までに自治体システムの標準化対応が求められていますが、実際はあまり進んでいません。多くの自治体でDX推進に遅れが生じているのが現状です。

内閣官房が2022年12月23日に「デジタル田園都市国家構想総合戦略」を閣議決定し、デジタル社会を推進するために330万人のデジタル人材が必要と推計しています。しかしながら、2022年時点における情報処理・通信技術者の数は100万人という深刻な人材不足に。

この状況を受けて、国は2024年度末までに年間45万人のデジタル人材を育成する体制構築を目指していましたが、自治体レベルでの人材確保は依然として困難な状況が続いています。

2025年の崖が自治体に与える影響

「2025年の崖」と呼ばれる大きな課題。この問題は、既存の基幹システムの老朽化や保守・運用コストの増大により、自治体運営に深刻な影響を与える可能性があります。

2025年の崖を乗り越えるためには、単なるシステム更新ではなく、抜本的な業務プロセスの見直しとデジタル化が不可欠です。遅れを取る自治体ほど、より大きなコストと労力が必要になる危険性があります。

自治体DXが進まない5つの根本的理由

多くの自治体でDX推進が遅れているのはなぜでしょうか。具体的な5つの理由があります。

1：デジタル人材の深刻な不足

自治体DXの推進プロジェクトはデジタル技術に強い人材が数人いれば進むものではなく、組織全体の協力が欠かせません。今は地方公務員の減少によって人手が足りなくなり、通常業務だけでも手一杯になってしまっている状態にあります。

特に小規模の自治体では、専門的なデジタル知識を持つ職員の確保が難しく、外部委託に頼らざるを得ないケースが多く見られます。しかし、外部委託だけでは内部のデジタルに関する理解が進まず、DX推進体制の構築は一層難しくなっています。

デジタル人材不足の具体的な影響

システム導入時の要件定義ができない
導入後の運用・保守が適切に行えない
データ分析や活用の専門知識が不足
セキュリティ対策の知識が不十分

2：予算確保の困難さと財政制約

総務省のアンケート調査でもDX推進の課題として「財源の確保」が最も多い回答になっています。自治体のDXには初期投資だけでなく、継続的な運用コストも必要となるため、財政状況の厳しい自治体では予算確保が大きな障害となっています。

特に人口減少や税収減少に直面している自治体では、DXよりも目前の住民サービス維持が優先されがちです。しかし、長期的な視点で考えると、DXによる効率化が財政立て直しの鍵となります。

3：組織内の変革抵抗と意識の壁

従来の業務プロセスに慣れている職員にとって、デジタル化は大きな変化となります。特に年配の職員や長年同じ業務を担当してきた職員からは、変化への抵抗感が生まれやすい傾向があります。

また、管理職層のDXに対する理解不足も、推進が遅れる要因の一つです。DXの必要性は理解していても、具体的な効果やプロセスについての知識が不足していることが多いです。

4：住民ニーズと技術導入のミスマッチ

自治体DXでは、住民にとって本当に必要なサービスの見極めが重要です。しかし、技術先行で導入を進めた結果、住民の利用率が低いシステムが生まれるケースも少なくありません。

高齢化が進む地域では、デジタルサービスへの対応が難しい住民も多く、情報格差の問題も考慮する必要があります。

5：段階的な計画策定の不備

多くの自治体では、DX推進における明確な段階的計画が策定されていません。「とりあえずデジタル化」という発想では、効果的なDX推進は困難です。

現状分析から始まり、優先順位の設定、段階的な導入計画、効果測定まで含んだ包括的な戦略が必要ですが、このような計画策定のノウハウを持つ自治体は限られています。

今すぐ実践できる自治体DX推進の具体的ステップ

遅れを取り戻すために、今からでも始められる実践的なアプローチを紹介します。

1：現状把握と優先順位の明確化

まず重要なのは、自治体の現状を正確に把握することです。以下の項目について詳しく調査しましょう。

現状調査のチェックポイント

既存システムの稼働状況と更新時期
各部署の業務プロセスとデジタル化の可能性
職員のITスキルレベルと研修ニーズ
住民からの要望やニーズの分析
近隣自治体のDX事例調査

この調査結果をもとに、効果が高く実現可能性の高い分野から優先的に取り組む計画を立てます。

2：人材育成と体制整備の同時進行

人材不足を解決するためには、外部人材の活用と内部人材の育成を並行して進める必要があります。

効果的な人材確保策

デジタル庁や総務省の人材派遣制度の活用
近隣自治体との人材共有・協力体制の構築
民間企業からの出向・兼業人材の受け入れ
職員向けデジタル研修の体系的実施

総務省自治行政局地域情報化企画室により、自治体DX推進における国の支援策も活用できるため、積極的に情報収集を行いましょう。

3：小さな成功事例の積み重ね

いきなり大規模なシステム導入を行うのではなく、小さな成功事例を積み重ねることで、組織内の理解と協力を得ることが重要です。

取り組みやすい初期施策

窓口業務の一部オンライン化
内部文書の電子化とペーパーレス化
チャットボットによる住民対応の自動化
職員向けタブレット端末の導入

これらの施策から得られる成果を組織内で共有し、DXの効果を実感してもらうことで、より大きな変革への理解を促進できます。

4：住民参加型のDX推進

自治体DXを成功させるためには、住民の理解と協力が不可欠です。住民参加型のアプローチを採用することで、より効果的なDX推進が可能になります。

住民参加の促進方法

DX推進に関する住民説明会の開催
住民アンケートによるニーズ調査
デジタルサービス利用体験会の実施
住民代表を含むDX検討委員会の設置

特に高齢者など、デジタル機器に不慣れな住民に対しては、丁寧なサポート体制の整備が重要です。

FunTre株式会社の自治体向けサービス

FunTre株式会社は、「お問い合わせ自治体」の窓口を設けているほか、「地域活性化講演・マーケティング研修」や「デジタルリスキリング研修・事業」、「ふるさと納税出品・販促サポート」といった自治体向けの支援も行っています。

事例：高山市におけるIT人材育成事業の取り組み

高山市では、若者の減少傾向と一人ひとりの生産性向上のために、IT人材の需要が高まっている現状を背景に、IT人材育成事業がスタートしました。これは、IT時代の壁を乗り越えるための第一歩と位置づけられています。

「たかやまデジタル未来アカデミー」について

具体的には、「たかやまデジタル未来アカデミー」という、飛騨地域の高校に在籍する生徒を対象としたIT人材育成事業が実施されています。

このアカデミーでは、開発エンジニアやプログラマーに必要なプログラミング言語などの知識・技術の習得を目的とした研修を、オンライン講座と対面講座を交えたハイブリッド型で提供しています。

事業の目的と展望

この事業の目標は、単にITスキルを教えるだけでなく、習得したITスキルを活用して「ITによる地域課題解決方法の提案」を目指すことにあります。

将来的には、IT関連企業の誘致や世界で活躍できる人材の育成、そして本事業を通じてITスキルを活かした地域課題の解決に取り組み、飛騨地域のDX化を促進する事業として展開されています。

成功事例から学ぶ効果的な推進手法

実際にDXを成功させた自治体の事例から、効果的な推進手法を分析します。

規模別成功パターンの分析

総務省の自治体DX推進参考事例集では、様々な規模の自治体における成功事例が紹介されています。これらの事例から共通する成功パターンを抽出すると、以下のような特徴が見られます。

大規模自治体の成功パターン

専門部署の設置と専任職員の配置
段階的かつ計画的なシステム導入
豊富な予算を活用した包括的なDX推進

中規模自治体の成功パターン

近隣自治体との連携による共同システム導入
重点分野を絞った集中的な取り組み
民間企業との連携による専門知識の活用

小規模自治体の成功パターン

クラウドサービスの積極的な活用
外部委託とのバランスの取れた推進体制
住民との密接な連携による合意形成

業務分野別の導入優先度

効果的なDX推進のためには、業務分野別の優先度を理解することが重要です。

優先度が高い分野

窓口業務のデジタル化：住民の利便性向上が直接的に実感される
内部業務の効率化：職員の働き方改革と業務コスト削減
データ活用基盤の整備：将来の高度なサービス提供の基盤

中長期的な取り組み分野

AIやIoT技術の活用：より高度なサービス提供
広域連携システム：近隣自治体との協力体制構築
住民参加型プラットフォーム：民主的な意思決定の支援

今から始める段階的な目標設定と推進計画

限られた時間の中で効果的なDXを実現するための、具体的な目標設定方法を解説します。

短期目標（6ヶ月以内）の設定

基盤整備の完了

DX推進体制の確立（責任者の明確化）
現状分析と課題の洗い出し
職員向け基礎研修の実施
初期予算の確保と財源の明確化

中期目標（1-2年以内）の設定

具体的なシステム導入の開始

優先度の高い業務のデジタル化実現
職員のデジタルスキル向上
住民向けオンラインサービスの段階的提供開始
近隣自治体との連携体制構築

長期目標（2-3年以内）の設定

システム標準化対応と持続可能な体制構築

政府が求める標準化対応の確実な実現
持続可能なDX推進体制の確立
住民満足度の向上と業務効率化の実現
データ活用による政策立案の高度化

目標達成のための評価指標設定

DXの進捗を客観的に評価するため、具体的な指標を設定することが重要です。

定量的指標の例

オンライン手続きの利用率
業務処理時間の短縮率
システム運用コストの削減額
職員のデジタルスキル向上度

定性的指標の例

住民満足度の改善
職員の業務負担軽減実感度
組織内のDXに対する理解度
近隣自治体との連携強化度